農家民宿とは
農業者が経営する民宿で、農林業体験・農山村での体験ができるプランを用意しているものを農家民宿といいます。
農山村には、都市にはない景観、文化など魅力的な観光資源が溢れています。
都市住民が日頃の喧騒から開放されリラックスできる場が農山村にはあり、アクティビティを提供する宿は今大注目の宿泊施設とされています。
農家民宿は、「農山漁村滞在型余暇活動のための基盤整備の促進に関する法律(通称余暇法)」に基づくもので、従来の旅館業などとは違った立位置にあるものです。
大人数のお客様を一斉に扱うのではなく、少人数のお客様にきめ細かなサービスをおこなうスタイルが農家民宿に適した営業スタイルとなります。
農家民宿の開業要件
農家民宿ならではの要件として、「農山村滞在型余暇活動」を提供することが求められます。
農山村滞在型余暇活動とは、主として都市の住民が余暇を利用して農村・山村に滞在しつつ行う農作業の体験・森林施業の体験その他農林業に対する理解を深めるための活動のことをいいます。
農村型の例
- 農作業の体験指導
- 農産物の加工又は調理の体験の指導
- 地域の農業又は農村の生活及び文化に関する知識の付与
- 農用地その他の農業資源の案内
- 農作業体験施設等を利用させる役務
- これらに関する役務のあっせん
具体的には、田植え、稲刈り、果物・野菜の収穫、そば打ち、漬物つくりなどの農産物体験や、紙すき、雪かき、祭りなどの地域に関係することなどが該当します。
山村型の例
- 森林施業又は林産物の生産若しくは採取の体験の指導
- 林産物の加工又は調理の体験の指導
- 地域の林業又は山村の生活及び文化に関する知識の付与
- 森林の案内
- 山村滞在型余暇活動のために利用されることを目的とする施設を利用させる役務
- これらに関する役務の提供のあっせん
具体的には、下草刈、枝打ち、山菜取り、きのこ汁作り、木工細工などの体験の提供が該当します。
勘違いしやすいのですが、決して農林業者でなければ農家民宿を開業できないのではなく、これらアクティビティを提供することができれば農林業者でなくても農家民宿を開業することができます。
開業に必要な許可
農家民宿は、人を宿泊させる旅館業になりますので、旅館業の許可を受けることが必要です。
ただし、農林業者は特別に旅館業法の規制が緩和される措置がとられます。
農林業者と非農林業者では下記のように要件の違いがあります。
緩和されるもの | 農林業者 | 非農林業者 | ||
---|---|---|---|---|
客室延33㎡未満 | 客室延33㎡以上 | 客室延33㎡未満 | 客室延33㎡以上 | |
旅館業法 | ○ | ○ | × | ○ |
建築基準法上の取扱い | 住宅 | 旅館 | × | 旅館 |
余暇法登録 | 農林業体験民宿 | 農林業体験民宿 | × | 農林業体験民宿 |
農家・山村民宿の需要
都市部に在住している人達が、農山漁村との接し方についてアンケートをとったものが左のグラフになります。
このグラフから、移住を希望している人は少ないということが分ります。都市部の便利な生活に慣れた人はそう簡単には田舎に移り住もうと考えることはないように思えます。
田舎暮らしをしてみたいと思ってもわざわざ移住までしてとはならないのでしょう。しかし、観光などで訪れたいと考えている人は46.5%とかなりいるのです。
つまり、住みたくはないけど余暇を過ごす程度でなら田舎暮らしも良いと考えている人がたくさんいることになります。
これらの人達が田舎で滞在する場所はどこになるのでしょうか?
右のグラフは田舎でやってみたいことのアンケート結果です。
農産物直売所の利用が際立っておりますが、これは農山魚村での食への信用が高いことの表れでしょう。
そして、次に多いのが自然体験・レクレーションといったアクティビティー。
さらに続くのが農家民宿の利用。
つまり、田舎へは単に観光に来ることを目的としているわけではないのです。
移住は無理だけど、でも田舎暮らしもしてみたい。
このように、農山漁村に滞在することで、日常生活ではできないことを経験しようと考えると都市在住者の数は年々増え続けています。
このようなニーズに応えることができるのは大型リゾートホテルではなく、農家・山村民宿を始めとするゲストハウスになります。
農家・山村民宿は、都市部在住者と農山村とを結ぶ架け橋のような存在といっても過言ではないのです。
さらに、ここ数年の傾向では、就農を希望して都市部より移住してくる人も増えてきています。
長野県では、就農希望の農業女子を増やすべく補助制度を創設していますが、農業だけで生計を立てていくことは簡単ではありません。
農業と農山村民宿を兼業することにより、農業が軌道に乗るまでの経済的な支えとして、または農業と宿泊業を収益の柱として運営することも現実的に可能なことになります。
今後の信州全体で増加する観光客を受け入れるのは、これら農山村民宿などのゲストハウスになるのではないでしょうか。