民泊と聞いて何を思い浮かぶでしょうか?
Airbnbなどを利用した空き部屋または空き家に泊まらせるビジネスが、民泊として認知されてきてはいますが、このようなシェアリングサービスが台頭してきたのはここ数年の話です。
でも実際は、民泊というサービスはそれよりももっと昔から行われています。
民泊の概念
『民泊とは、民家に人を泊めること』
これが根本的なものになります。まずここがスタート地点です。
期間や料金が云々などといったことは別問題であって、かえって話をややこしくしているだけのことです。
本来の民泊サービスは誰もが行うことができるサービスなのです。
それが、ここ数年の間にビジネス的な要素が取り入れられ、グレーゾーンだから良いなどと自分勝手な誤った理屈が蔓延し、民泊に対するイメージを悪くしていきました。
そのようなことを言うと怪訝な顔をされる方もいらっしゃるとは思いますが、おそらく、たくさんの方が今迄に民泊サービスを行ったことがあるのではないでしょうか。
二つ簡単な例を挙げてみたいと思います。
(例1)
AさんがBさん、Cさんと、Aさん宅の近所の飲食店で食事をしていました。
お酒も入り、話も弾み、気が付くと閉店時間になったため解散して帰ろうとしたところ、すでにBさんとCさんが利用する電車の終電が過ぎていることに気が付きました。
そこで、Aさんの誘いで二人を自宅へ招き、無償で客用の寝具を提供し宿泊させた場合。
(例2)
交際中の男女において、一方が他方の部屋へ泊りに行く場合。
例1、例2で共通しているのは、知人友人を自分が管理している部屋へ無償で宿泊させていることです。この行為は民泊を理解するうえで重要なポイントですので、詳しく説明していきたいと思います。
そもそも旅館業とは、どのようなものでしょうか。
旅館業の定義については『旅館業とは』に詳細がありますが、大事なのでここでも言及します。
旅館業とは、「施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業」と旅館業法により定義されています。
宿泊料を受けてとは
「宿泊料を受けて」とは、文字通り宿泊させる対価として、金銭またはそれに代わる経済価値を有するものを受け取ることを言います。
宿泊料とは
宿泊サービスの対価として受け取るもので、宿泊料名目に限らないということです。
- 宿泊料に該当するもの
- 休憩料、寝具賃貸料、クリーニング代、水道光熱費、室内清掃費、ルームチャージ
- 宿泊料に当たらないもの
- 食事代、テレビ等の視聴料、体験事業の体験料
人を宿泊させる営業とは
- 厚生労働省によると、人を宿泊させる営業とは次のように解釈されています。
- 施設の管理・経営形態を総体的にみて、宿泊者のいる部屋を含め施設の衛生上の維持管理責任が営業者にあると社会通念上認められること。
- 施設を利用する宿泊者がその宿泊する部屋に生活の本拠を有さないことを原則として、営業しているものであること。
以上は、不動産賃貸業と比べた場合について述べられたものですが、ちょっと分かりづらいですね。
については、実際にその施設(部屋も)を管理している営業者かどうかを問題にしています。
つまり、宿泊のために使用している施設のその全部が営業者に管理責任があることが宿泊させる営業行為には必要になります。
翻って、不動産賃貸業では、建物自体を管理していることはあっても、その部屋については大家又は管理会社は関与していなく、入居者が管理していることになります。
これは、賃借人である入居者の了解がなければ、大家、管理会社といえでも勝手に部屋に入ることは許されないことからも明らかです。
ですので、部屋自体或いは戸建ての建物自体、すなわちその不動産の持つスペースを貸したとしても旅館業には当たらないため、旅館業法の適用は受けません。
では、話のついでに、貸別荘はどうでしょうか。
別荘を貸し出す場合に、建物自体を貸すことはあまりないと思われます。
おそらく一通りの家具や寝具が備わっている状態にあるのではないのでしょうか。
でなければ、別荘オーナーが使用するとき一々家具を搬入しなければならず非合理的です。
とすると、貸別荘の利用者は鞄一つで別荘を利用できることになります。
もうお気づきかと思いますが、これは旅館業に当たります。
営業とは
厚生労働省によると、旅館業に該当する営業とは、「社会性をもって継続反復されているもの」とされています。
ここで、「社会性をもって」とは、社会通念上、個人生活上の行為として行われる範囲を超える行為とされています。
厚労省の解釈では、「営業」は継続反復するものとされていますが、注意しなければならないことがあります。
というのも、旅館業法以外の法律で、特に業法と言われる特定の仕事をおこなうために定められている法律には、「たとえ1回でも、利益を得る目的で営業行為を行えば、それを営業としてみなす」として解釈されているものが多く存在していますので、いつまでも継続反復の解釈が同じとは限りません。
社会性について
- 社会性があると認められるもの
- 不特定の者を宿泊させる場合
- 広告等により広く一般に募集を行っている場合
- 仲介サイト等に登録し集客を行っている場合
- HPを作成し集客を行っている場合
- 社会性がないと認められるもの
- 友人・知人などを泊める場合
継続反復について
- 継続反復が認められるもの
- 宿泊募集を継続的に行っている場合
- 曜日限定、季節限定など営業日を限定した場合であっても繰り返し行っている場合
- 継続反復が認められないもの
- 年1回(2~3日程度)のイベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いもの
以上を踏まえると、例1、例2は民泊には該当しますが、旅館業法が適用されるわけではないことが分かります。
「合法的な民泊」という表現が適切かは置いておいて、そもそも誰しもが合法的に民泊サービスを行えることは民泊ビジネスを始める前に認識しておかなければ無用な混乱を招きかねません。
宿泊させた対価を貰わないボランティア的な行為であれば、違法性は阻却されることになります。
民泊サービスと民泊ビジネスを明確に分けて認識する必要があったのです。
旅館業許可のいらない民泊の例
民泊サービスの代表的なものがあります。
それは、couchsurfing(カウチサーフィン)という無料でホストの家に宿泊できるサービスです。
couchsurfingは、アメリカの非営利団体Couchsurfing international,inc.が運営している民泊仲介サイトです。
民泊ビジネス仲介サイトの代表格であるAirbnbと似ていますが、根本的なところでまったく別のサービスになります。
このサービスを利用して、ゲストを宿泊させる行為は旅館業法に抵触しません。
新たな民泊の概念
民泊ビジネスが盛んになってくるにつれ、今までの民泊の概念(誰もが民泊を行えること)に変化が起きております。
平成27年10月5日の第49回規制改革会議では、民泊とは「住宅、別荘などの一部又は全部を短期宿泊用に貸出しをする」と説明されており、民泊サービスと民泊ビジネスが一緒くたにされているようにも取れます。
旅館業では、業として宿泊料を受けて宿泊させるわけですが、民泊では、部屋(スペース)を時間で貸し出す不動産賃貸のようなビジネスに発展していくと思われます。
それに伴い、旅館業との明確な住み分けがされるのでしょう。
民泊の二分化
平成28年4月1日より、旅館業法が改正され民泊ビジネスは簡易宿所のカテゴリーに入りました。
グレーゾーンなどど一部解釈されていましたが、これにより、旅館業許可(簡易宿所営業許可)を受けていない施設(物件)は違法営業になることが法律によって示されたことになります。
また、これとは別に国家戦略特別区域法という法律により、国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業を行う区域に認定された自治体であれば、都道府県知事等の認定を受けることにより旅館業許可を受けなくても民泊ビジネスを行うことができます。