簡易宿所とは、旅館業法によって定められた宿泊施設形態の一つで、実務的には、ホテル・旅館などの要件に当てはまらない施設を簡易宿所として扱っています。

簡易宿所の概念は幅広く、ペンション、民宿、キャンプ場、ゲストハウス、バックパッカーズ、ユースホステルなど、色々な宿泊施設が該当します。
また、旅館業法改正により民泊も簡易宿所として取り扱われることになります。

客室の主な施設基準

簡易宿所はホテル・旅館と比べて施設の基準要件が緩くなっております。

その分、事業として参入しやすく、設備への初期投資金額も抑えることができるメリットがあります。

法改正前 現在
客室の延べ床面積 33㎡以上 一人辺り3.3㎡(定員10人未満)
33㎡以上(定員10人以上)
客室面積 4.8㎡以上
(7㎡以上が望ましい)
4.8㎡以上
(定員10人未満の場合を除く)
客室の幅員 2m以上 2m以上が望ましい
宿床面積
2.5㎡以上/1人
3㎡以上/1人(寝台設置の場合)
4.5㎡以上/1人(二段ベッド設置の場合)
3.3㎡以上/1人(定員10人未満)
※10人以上の場合は変更なし
床面積の1/10以上 変更なし

玄関帳場(フロント)について

法改正前は、簡易宿所営業許可を受けるためには次の要件を満たさなければなりませんでした。
「適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けること。」

ホテル、旅館、民宿、ペンションなど従来からある宿泊施設には当たり前のように玄関帳場が設置されています。

はっきり言って、今までこの規定で問題になることはほとんどありませんでした。

そもそも運営的に、チェックインする客と対面で宿泊名簿に記入したり会計をすることは当たり前のことであり、帳場を設置しないということは稀有なケースでしかありませんでした。

さらに、インターネットの普及によりクレジットカード決済など、フロント業務の機能を必ずしも帳場でおこなわなければならない必要性もなくなってきていました。

そうした中、運用上の必要性も希薄化してしていた玄関帳場設置義務が、法制定時には想定もしていなかったところでその存在感を示す出来事がありました。

Airbnbなどのいわゆるシェアリングサービスによる「民泊」の台頭です。

簡易宿所営業許可を受けるためには多々要件をクリアする必要がありますが、建物一棟貸しや空き部屋(オーナー不在型)を鍵の授受だけで宿泊施設として貸し出す際にフロント業務をおこなうことは非現実的なことでもありました。

つまり、ほとんどの民泊では玄関帳場の設置ができないため、この要件が規制のハードルの役目の一つとしての機能を果たしていたのでした。

現行法での玄関帳場設置について

定員10人以上 定員10人未満
適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けることが望ましいこと
次の条件をすべて満たせば設置しなくてもいい

  • 玄関帳場に代替する機能を有する設備を設けることその他善良の風俗の保持を図るための措置が講じられていること。
  • 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。